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2013年08月15日

父の本

  
常に厳しく必要以上に頑固な父親の事が、正直あまり好きではなかった。
結婚し子供が生まれてからは、それなりに顔を合わせているものの、十代から二十代半ばまでの間は顔を見るのも嫌だった。
  
今でも忘れられないのが、中学生か高校生の頃、テレビのクイズ番組にアシスタントとして出演していた「坂上とし恵(さかうえ としえ/現、野々村俊恵)」さんを発見し、私が「あ、この人、"さかうえ"っていうんだよね〜」と話したところ、父は「そんな名前のヤツは絶対にいない!誰がどう読んでも”さかがみ”だろ!お前は馬鹿か!」と…
人の名前なんて読み方は色々だし、実際に”さかうえ”だし、そんなところを随分と説明し抵抗したけど、結局最後まで理解してもらえずの大喧嘩。
  
まあ、こういった理不尽な話しはこれだけで終わるはずも無く、いろんなところでぶつかっては口論をしてきました。
昔の人は「一度口にした事は絶対に曲げない!」って話しを良く耳にするけど、それの極端な例って言うか、まあホントに怒りっぽく頑固な人です。
  
そんな父が救急車に乗せられてからというもの、頑固さが薄れたと言うか大人しくなってしまったと言うか、なんかすっかり角が取れてしまった風に思える。
それになんとなく、孫達にでは無く、私に会いたがる様になったんじゃないかって気もする。
決して優しくなった訳ではないが、ある部分で私を認めようとしているのかもしれない。
とは言え、母には相変わらず厳しく頑固なままなんで、良いのか悪いのか、微妙なところなんだけどね。
  
今朝は、トイレの中に手摺を設置して欲しいと要望があり出動。
手間的にも時間的にも大した作業じゃなかったんだけど、三度も四度も「ありがとう」を口にしてた。
柄でもないと言ったら失礼かもだけど、なんか拍子抜けって気分。
今までなら「お、こりゃちょうど良いな!」程度が最大値だったんでね…
  
で、帰り際、一冊の本を差し出し「これをお前にやる」と。
  
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これ、昭和50年に発刊されたキャンプの本で、父が加わっていた「山の会」監修による一冊。
小さい頃から聞かされていた自慢の本で、表紙の人物は若かりし頃の父らしい。
  
この本を私に授けた本意はまだ分からないけど、少なからず世代交代というものを意識しているのだろうと思う。
そう考えると、なんだか急に切ない気分になった。
好きか嫌いかは別として、父は「厳しくて頑固」が普通であり基準。
年を重ねれば老い衰えて行く事は当然の事と理解しているが、入院してからの数ヶ月で急激に衰えてしまったので、まだ感覚的に追い付けていないのかもしれない。
  
考えてみれば、父にも母にも何にもしてあげられていない。
この先、どんな事をしてあげられるのかも、正直良く分からない。
でも、出来うる限り、接して話しをしようと思う。
父が永い眠りにつく時までには、可能な限り距離を縮めたいと思う。
最後の瞬間に流れる涙の量は、きっと、これから先の付き合い方で決まるんだろうとつくづく思う。
  
いつの日か、この本を参考にキャンプをしてみようと思う。
  
posted by ITO-CHAN at 23:59| Comment(0) | 日記